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AROMA SOMMELIER

金木犀は、沈丁花、クチナシと並ぶ「三大芳香木」のひとつに数えられる中国原産の秋の花。秋になると街角でふと鼻をくすぐる、あの懐かしくも甘い香りの源です。黄金色の小花を密集させ、ふんわりとした甘く芳しい香りを放ちます。
中国では古くから「桂花(けいか)」として親しまれ、宮廷文化の中では香料や薬草として重宝されてきました。香りの強さや持続性から、古くは衣に香を移す「香衣(こうえ)」としても活用され、香文化の中に深く根付いています。現代でも、お酒やお茶、お菓子にも用いられ、詩や絵画の題材としても愛されている植物です。
日本には江戸時代に渡来し、庭木や街路樹として愛され、特に9~10月の開花期にはその魅惑的な香りにより、季節の移ろいを告げてくれます。
その香りは甘くやわらかく、どこかノスタルジック。天然の香りの採取には大量の生花が必要ですが、花は繊細で熱に弱いため抽出が非常に難しく、エッセンシャルオイルは大変高価で希少な香りとなっています。凝縮された華やかで濃厚な香りは金木犀そのもので、その芳醇で豊かな香りを存分に楽しむことができます。

科名:モクセイ科
学名:Osmanthus abs.
抽出部位: 花
抽出方法: 溶剤抽出法(アブソリュート)
主要産地: 中国南部
主な芳香成分:トランス-βイオノン、リナロール、γデカラクトン
香りのタイプ:フローラル
香りの揮発性:ミドル~ラストノート
香りの印象:強
すみれの花にも含まれており、ベリーのような甘さをもつ「β-イオノン」という成分や、桃にも含まれている「γ-デカラクトン」という成分を含有していることから、「フルーティー」と表現されることも多い金木犀の香り。まるで熟したアプリコットや白桃のような果実のニュアンスを漂わせます。中でも「イオノン類」によってもたらされる、深くミルキーでパウダリーな余韻は、印象的な香り立ちをもたらします。
香りの奥には、ほんのりと感じられる青みとウッディなニュアンスが重なり合い、甘美な香りに奥行きと透明感を与えています。懐かしさと優美さが溶け合ったこの香りは、まるで秋の夕暮れ、茜色に染まる空の下で静かに揺れる金色の小花のようです。
心の奥にそっと灯をともす香り
金木犀の香りには、心をやわらかく包み込むような穏やかな鎮静作用があります。まるで秋の夕暮れに差し込む柔らかな光のように、ストレスや孤独感でかたくなった心をやわらげ、静かな安心感で心を満たしてくれます。また、優れた心理的作用も期待でき、気分をリフトアップさせ、塞ぎ込んだ気持ちを少しずつ軽くしながら、前向きな気持ちへと導いてくれます。
また、ミルキーで甘い香調は、女性の心と体にもやさしく働きかけ、女性ホルモンのバランスを整えるといわれています。月経前のイライラや情緒不安、さらには更年期に感じる不調に対しても、寄り添うようなサポートが期待されます。

甘くノスタルジックな金木犀の香りは、空間に秋の情緒を漂わせるだけでなく、心を内側から癒す力を持っています。香りの深みとやさしさは、インテリア演出にもセルフケアにも最適で、特に秋の季節にその魅力が一層引き立ちます。
秋のインテリアに、やわらかな余韻を
金木犀は、その香りだけで空間に秋の情景をもたらす力を持っています。玄関やリビングでは、自然派ディフューザーに数滴垂らすだけで、まるで黄金色の木漏れ日が静かに差し込むような温もりに満ちた空間へと変わります。訪れる人の心に、どこか懐かしく、穏やかな気配を届けてくれます。
ドライフラワーや木製の家具、素焼きの器やリネンの布といった自然素材と組み合わせることで、ナチュラルな空間にやさしい甘さを添え、秋の空気を纏うような豊かな雰囲気に仕上がります。また、和モダンな佇まいとも相性が良く、漆喰や木の質感と調和しながら、知的で静謐な印象を漂わせます。
静かな夜のセルフケアに
1日の終わり、ふと自分と向き合う夜のひとときに。読書や日記を綴る時間、湯気の立つホットティーを手に、金木犀の香りをそっと漂わせれば、過去の思い出と語らうような穏やかな時間が流れ始めます。
その甘く奥ゆかしい香りは、感情の揺らぎに静かに寄り添い、心をなだめ、やさしく包み込んでくれます。アロマストーンやティッシュに1滴垂らして枕元に置けば、深い安らぎの中で心地よい眠りへと誘ってくれるでしょう。
また、心を整えたい夜、感情にそっと耳を傾けたい夜に。瞑想やセルフリフレクションにも最適で、感情の整理や自己対話を必要とする夜に、金木犀の香りはまるで静かな伴奏のように寄り添い、内面への旅を穏やかにサポートしてくれます。
秋の深まりとともに
秋の風物詩ともいえる金木犀の香りは、鮮やかなオレンジの花が咲き誇る時期と同様に9月から10月にかけての時期に楽しむのがおすすめです。花は咲き始めると1週間ほどで散ってしまいますが、芳香用にエッセンシャルオイルを取り入れることでその華やかで秋らしい雰囲気を引き続き楽しむことができます。
夏の余韻を残しつつも、日差しがやわらぎ、空が高くなる季節。気温が下がり始め、空気が澄んでくる秋の空気の中では、金木犀の濃密な甘さがいっそう際立ち、香りの余韻が長く、深く感じられます。季節の移ろいとともに感じる一抹の寂しさや、胸の奥にある静かな感情。そんな秋ならではの心模様に、金木犀はあたたかく、やわらかく寄り添い、そっと癒しをもたらしてくれます。
シトラス系:オレンジ、グレープフルーツ
フラワー系:ジャスミン、ローズ、イランイラン
ハーブ系:クラリセージ、ゼラニウム
ウッド系:シダーウッド、サンダルウッド
金木犀の香りは、非常に個性的で甘く強い印象を持つため、ブレンドする際には香り同士のバランスに繊細な注意が必要です。とくに、ジャスミンやイランイランといった濃厚なフローラル系と合わせると、華やかな印象は増しますが、香り全体が重くなりすぎてしまうことがあります。
一方、シトラス系やハーブ系の軽やかな香りと組み合わせることで、金木犀の甘さに透明感や抜け感が生まれ、日常使いにも心地よいブレンドに仕上がります。また、サンダルウッドやシダーウッドのような深みのあるウッディ系のアロマを加えると、香りに芯と落ち着きが生まれ、穏やかで美しい余韻が続きます。
金木犀はそれ自体が非常に印象的な香りのため、他の香りとブレンドする際には、まずは数滴から控えめに加えていき、心地よいバランスを探してみましょう。
GB04 桂林キンモクセイ
柔らかな陽だまりを思わせる、爽やかさと甘さのバランスが絶妙な香り。金木犀の濃密なフローラルに、ロサリナとパルマローザの優しいグリーンさが寄り添い、レモンとライムの柑橘が軽やかさを感じさせます。
午後のリラックスタイムや休日の夕方におすすめの、心をそっと照らすブレンドです。
原料:キンモクセイ, ロサリナ, パルマローザ, レモン, ライム, etc.
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