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熱帯から亜熱帯にかけて生育するイネ科の多年生植物のベチバー。その外見はススキに似ており、細く長い茎は2メートルにも達し、多数が集まって大きな株を形成します。他のイネ科とは異なり、根からエッセンシャルオイルが抽出されるのが特徴です。2〜3年育てた根は、淡黄色から赤みを帯びた色をしており、ちぢれて長い独特の形です。抽出されたエッセンシャルオイルは、瓶を逆さにしてもなかなか落ちてこないほどほどの高い粘性を持ちます。
「ベチバー」という名は、タミール語で「掘り起こした根」を意味し、古い時代から広い地域に分散していたため、多くの名称で呼ばれています。インドでは「香り高い根」という意味を持つカスカスやクスクス、ジャワではアカール・ワンギといった名があり、それぞれの土地に根差した呼び名が存在します。
古代インドでは乾燥させた根を粉末状にして宗教儀式の薫香に用いたり、衣蛾除けに利用したりと暮らしの中で取り入れられていました。その他にもスリランカでは女性がココナッツオイルに根を漬け込みヘアオイルとして使用し、ジャワでは根を編んでマットや帽子を作り、葉は扇や屋根材として利用されてきました。さらに深く根を張る性質を持つため、土壌流出を防ぐ目的でも植えられました。

基本情報

科名:イネ科
学名:Vetiveria zizanioides
抽出部位:根
抽出方法:水蒸気蒸留法
主要産地:インドネシア、インド、スリランカ
主な芳香成分:べチベロール、ベチボン、クシモール など
香りのタイプ:ウッド
香りの揮発性:ベースノート
香りの印象:強



ベチバーの香りの特徴

ベチバーは湿った土や煙たい土を思わせる独特のウッディーでアーシーな香りが特徴です。燻した干し草のような落ち着きとやや渋みや苦みを含んだ香りは、産地によってニュアンスに違いがあります。個性的で土っぽさが強いため好き嫌いが分かれやすいものの、エキゾチックで深く神秘的な香りは、どこか惹きつけられる魅力を持ちます。
香りの持続性が非常に高く、他の精油との相性も良いため、香りを長く保つ保留剤として香水のベースノートとしても重宝されています。



ベチバーの持つ機能

心と体を深く落ち着ける、静寂の精油
ベチバーはインドやスリランカで「静寂の精油」と呼ばれるほど鎮静作用に優れ、心を落ち着け地に足をつけるような安心感をもたらします。落ち込みや精神疲労を和らげ、不眠や食欲不振といった心の不調を優しくサポートしてくれます。
また、関節や筋肉の緊張をほぐし、血行を促すことで、滞りやすい疲れやストレス解消が期待できます。さらに、強い殺菌作用が期待できるため、肌トラブルのケアにも応用され、ニキビや吹き出物、感染性皮膚炎のケアに適し、オイリー肌から年齢肌まで、様々な肌質にやさしく働きかけてくれます。



ベチバーを使うシーンや季節

心が落ち着かないときや疲れがたまっているときに。
安心感と安定をもたらしてくれるベチバーの香りが、深いリラックスや安眠をサポートし、心身を穏やかに整えてくれます。

落ち着きと高級感を作り出すベースノート
湿った土や重厚な木を思わせる奥行きのあるベチバーの香りは、ベースノートとして使用されることが多く、メインの香りとしてはあまり使用されません。しかし様々な香りと相性が良く、ブレンドを静かに引き締めてくれる効果を発揮するため、香りの保留剤として様々なブレンドで活躍します。
スモーキーでアーシーな印象を持つベチバーがブレンドされた香りは、空間に安心感や落ち着きをもたらすだけでなく、高級感や洗練された雰囲気を作り出します。特にフローラル系とブレンドすると、リラクゼーションサロンやおもてなしにぴったりな重厚感と高級感のある空間を作り出します。

夜のリラックスタイムに
深く落ち着きのあるベチバーの香りは、夕方から夜にかけてのリラックスタイムにぴったりの香りです。 地に足の着いた、どっしりとしたベチバーの香りが、疲れた体をやさしく包みこんでくれるため、穏やかでゆったりとした時間を過ごすことができます。
静かな空間にそっと漂わせることで思考がゆるみ、自然と呼吸も深くなるような感覚に包まれます。読書やストレッチなどのナイトルーティンのひとときをより穏やかに演出したいときに、そっと寄り添ってくれる香りです。

通年で使いやすい、万能な香り
ブレンドする香りによって印象が変わってくるベチバーの香りは、合わせる香りによっては1年を通して楽しむことができる香りです。
蒸し暑く疲れを感じやすい夏時期は、湿った土を思わせるような香りがひんやりと心地よく感じます。サンダルウッドなどのオリエンタル系の香りとブレンドすることで、より深い落ち着きと夏のリゾートらしいくつろぎ空間をお楽しみいただけます。 肌寒い季節には、オレンジやフランキンセンスなどの温かみを感じる香りと一緒に使用することで、ベチバーの重厚で温かみのある印象が引き立ち、寒さで縮こまった身体を優しく包みこんでくれます。



相性のいいオイル

シトラス系:オレンジ、レモン
フラワー系:イランイラン、ローズ
ハーブ系:ユーカリ、ラベンダー
ウッド系:サンダルウッド、フランキンセンス

非常に強く、個性的な香りのため、ブレンドに用いる際には使用量に注意が必要です。湿った土や重厚な木を思わせる奥行きのある香調に加え、アーシーで甘く残るようなアンダートーンを含むため、少量でも存在感が強く、ブレンド全体の印象を大きく左右します。
そのためメインの香りとして前面に出すことは少なく、ベースノートとして他の精油を支える役割で活用することが多いです。香りを長く持続させる保留剤としてブレンドに取り入れることが多く、フローラル系やシトラス系などと組み合わせると、香りに深みと落ち着きを加え、上質な空間を演出します。一方で土っぽさが強いため、ブレンド次第では重すぎたり、個性的すぎたりする印象になることもあります。調和を意識し、少量から試しながらバランスをとることが大切なポイントです。



「ベチバー」をブレンドした香り

D16 クワイエットサンセット

柑橘の温かみとゼラニウムの華やかさにラベンダーのリラックス感がブレンドされた、穏やかで上品な香り。そこにベチバーが加わることで香りに奥行きが増し、全身が優しく香りに包みこまれていくようなくつろぎをご体感いただけます。
原料:ベルガモット, オレンジ, ゼラニウム, ラベンダー, ベチバー


City series 横浜(YOKOHAMA)

お酒のジンに使用されるジュニパーや、カクテルに添えられるライムなどをブレンドした、お酒を連想させるような香り。ローズのエレガントさと、ベチバーのスモーキーなウッドの香りがプラスされることで、まるでオシャレなバーでゆっくり過ごしているような大人な空間を作り上げます。
原料:ジュニパー, ローズ, ライム, ヒノキ, ベチバー, etc.