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アロマを楽しむ方法はさまざまですが、なかでも「素材そのものが香りを受け止める」という発想から生まれたディフューザーがあります。それが、アットアロマの「stone diffuser TOKI(ストーンディフューザー トキ)」です。
このプロダクトを手がけるのは、日本の自然素材と左官の技術を活かした製品づくりで知られるsoil(ソイル)です。「TOKI」の製造に携わる職人へのインタビューをもとに、ディフューザーの背景にある素材とものづくりの物語をひも解きます。
──まず、soilというブランドについて教えてください。
soilは、石川県の左官会社「イスルギ」から生まれたブランドです。左官という仕事は、日本の建築を支えてきた伝統的な技術ですが、時代によって仕事量が変動することがあります。そうした中で、「左官の技術と珪藻土という素材を活かして、暮らしの中で使えるものをつくれないか」と考えたことが、soilの始まりでした。
最初は額装作品のような「左官アート」からスタートしましたが、その後デザインプロジェクトとの出会いをきっかけに、日用品へと広がっていきます。バスマットやコースターなど、左官の技術と珪藻土の素材としての機能を生かした製品を通して、土の魅力を暮らしの中へ届けてきました。
──soilとして大切にしていることは何でしょうか。
1番大切にしているのは、「素材と品質」です。珪藻土製品が広く知られるようになる一方で、粗悪なものも増えてきました。だからこそsoilでは、日本産の珪藻土を使い、手仕事で丁寧に仕上げることを守り続けています。
大量生産ではなく、素材の魅力を理解してくださる方に届けたい。その姿勢は、今も変わりません。
──「TOKI」の素材である珪藻土には、どんな特徴がありますか。
珪藻土は、「呼吸する素材」で、湿気や水分を吸い込み、環境に応じてゆっくりと放出する調湿性を持つ自然素材です。
湿度が高いときには吸収し、乾燥すると放出する。その動きはまるで呼吸のように感じられることから、そう呼ばれるようになりました。
また、吸水性や脱臭性にも優れ、古くから壁材などにも使われてきました。
──「TOKI」に使われている珪藻土について教えてください。
「TOKI」には、石川県珠洲市(能登)産の珪藻土を使用しています。珠洲の珪藻土は粘土質で、密度が高く、しっかりとした質感になるのが特徴です。粉が出にくく、製品としての安定感もあります。
今回のプロジェクトでは、「素材の色をそのまま活かしたい」というアットアロマさんからの想いもあり、着色をせず自然な色味で仕上げています。自然素材の表情を、そのまま感じてもらえるディフューザーだと思います。
──「TOKI」はどのように作られているのでしょうか。
まず、焼成された珪藻土を計量し、水と合わせて練ることから始まります。土の状態は日によって微妙に変わるので、水分量は職人の感覚で調整します。
その後、土を型に流し込み、コテで何度も表面を整えながら内部の空気を抜いていきます。角度や力加減で仕上がりが変わるため、慎重な作業です。
数時間後、土が少し固まったタイミングで型から外します。しかしこの段階ではまだ完全に固まっているわけではありません。
「TOKI」は角度が鋭く、中央が薄い形状のため、少しの歪みでもバランスが崩れてしまいます。形を確認しながら微調整を行い、その後ゆっくりと乾燥させます。急激に乾燥させると割れや歪みが出てしまうため、時間をかけて水分を抜くことが重要です。
最後に検品を行い、ミリ単位の精度だけでなく、全体の佇まいまで確認します。
──「TOKI」のデザインを見たとき、どんな印象でしたか。
最初に見たときは「シンプルな形だな」と思いました。直線的で、すっきりとしたフォルムですから。
ですが、実際に作り始めると、とても繊細なプロダクトでした。
角度が鋭く、サイズも小さい。さらに中央が薄い構造になっているので、ほんの少し歪むだけでも形が崩れてしまいます。
シンプルだからこそ、誤差が隠れない。精度が求められるデザインだと感じました。
──珪藻土とアロマの相性はどうですか。
とても良いと思います。
珪藻土は水分を吸収し、ゆっくりと発散する素材です。エッセンシャルオイルを垂らすと、内部に染み込み、少しずつ香りを放っていきます。
一度オイルを含ませると、数日後でもほんのり香りが残ることがあります。その持続性は、アロマを楽しむ素材として、とても魅力的です。
「TOKI」は、エッセンシャルオイルを直接垂らすだけで、穏やかに香りを空間へ広げます。小さなサイズながら、約4畳ほどの空間で香りを楽しめる設計になっています。
土を練り、型に流し、整え、乾かす。そして、最後に職人の目で確かめる。「TOKI」は、そうした丁寧な工程を経て生まれます。
主張しすぎない、小さな存在。しかしその中には、素材と技術が凝縮されています。
呼吸する素材が香りを抱え、ゆっくりと空間へと放つ。soilの左官技術と、アットアロマの香り。その出会いから生まれたのが、「stone diffuser TOKI」です。
静かに香りを受け止めるその姿は、アロマの時間を、より自然で豊かなものにしてくれるでしょう。
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