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COLUMN

木のぬくもりをそのまま活かした「wood diffuser rin(ウッドディフューザー リン)」は、東京・檜原村の木材から生まれました。
このプロダクトに関わるのが、森と人をつなぐ林業会社「東京チェンソーズ」。
林業の課題と向き合う中で生まれた「rin」の背景にあるものづくりと、森との関係性をひも解きます。
──まず、東京チェンソーズについて教えてください。
東京チェンソーズは、東京・檜原村を拠点に林業を行っている会社です。2006年に創業し、まもなく20年を迎えます。
檜原村は、島嶼部を除く東京都で唯一の村で、面積の約93%が森林です。一般的な東京のイメージとは異なり、山々に囲まれた自然豊かな地域です。
実は、東京の土地の約38%は森林だと言われています。多くの人が想像する以上に、「東京には森がある」というのが実情なんです。
──現在の林業や森には、どんな課題がありますか。
課題は本当にたくさんありますが、ひとつ大きな問題は「森は増えているのに、管理する人が減っている」ということです。
日本の森林の多くは、戦後の復興期に国策として植林されたものです。当時は今後の建築需要を見越して木が植えられましたが、実際に木材が必要になった時期には、まだ十分に育っていませんでした。
そのため、海外からの輸入材に頼るようになり、その構造が今も続いています。
その結果、現在では木の体積は増え続けている一方で、国産材は使われにくい状況にあります。さらに、それを手入れする林業従事者も大幅に減少しています。
本来、森は間引き(間伐)を行いながら健全に育てていくものですが、手入れが行き届かないことで木が過密状態になり、森の健康状態も低下してしまっているのです。
──そうした中で、どのような取り組みをされていますか。
私たちは「森づくり・ものづくり・ことづくり」という考え方で事業を行っています。林業として森を育てるだけでなく、木材を使った製品づくりや、森の価値を伝える活動まで一貫して行っています。
森の価値は、木材だけではありません。水を育み、空気をつくるといった環境としての役割も大きい。だからこそ、森と街の距離を縮めて、人・モノ・お金が循環する関係をつくることが重要だと考えています。
──「rin」に使われている木材について教えてください。
「rin」で使っているのは、間伐した木の先端部分。建築材としては使いづらく、製紙用パルプの原料やバイオマス発電の燃料としてチップになることが多かった素材です。
そんな素材の木としての魅力をどう活かすかを考えたときに、「rin」のようなプロダクトが生まれました。
私たちは、1本の木をできるだけ余すことなく使い切る「1本まるごと素材」を大切にしています。幹だけでなく、先端や枝など、それぞれの部位に意味があり、本来はすべてが素材となります。
──「rin」を通して、どのような価値を感じていますか。
重要なのは、「木材を使うこと」ではなく、森を健全に維持すること。均一な素材ばかりを求めると、伐採を加速させることにつながり、森に無理が生じてしまいます。
そうした中で、アットアロマさんは、木の表情やばらつきをそのまま価値として捉え、樹種をあえて限定せず、プロダクトとして形にしてくださいました。林業の現場から見ても、とても本質的な取り組みだと感じています。
──実際に「rin」を使う人に、どんなことを感じてほしいですか。
「東京に森がある」ということを思い出してもらえたら嬉しいです。
普段の生活の中で、森や林業のことを考える機会はほとんどありません。でも、ディフューザーにオイルを垂らした瞬間に、「この木はどこから来たんだろう」と思いを巡らせる。
その小さなきっかけが、森との距離を少し近づけてくれるのではないかと思っています。
──「rin」はどのように作られているのでしょうか。
まず、材料となる木は、伐採の時期も重要です。
水分を多く含まない秋から冬にかけて木を伐り、その後、皮を剥いで保管します。半年から1年ほど自然乾燥させたのちに工房へ運ばれ、加工に入ります。
工房では、丸太をカットし、「rin」の形へと切り出していきます。切り出した木は、1カ月ほど自然乾燥させます。 輪切りの形状は割れやすいため、時間をかけてゆっくり乾かすことで、大きく割れてしまうのを防ぎ、素材の状態を安定させていきます。
乾燥が終わった後、メタルフレームに入るサイズに削り、表面を1つひとつ磨き、仕上げていきます。
実際に手をかける工程は数日間ですが、伐採から乾燥期間を含めると完成までには1年以上の時間がかかります。
──「rin」はひとつひとつ表情が違いますよね。
そうなんです。木目や節、色味など、すべて違います。それは「不揃い」ではなく、その木が自然の中で育ってきた証です。
例えば節は、木が成長する過程でできた枝の痕跡です。また、木の表面に見られる樹脂(ヤニ)も、そのひとつです。ヤニは、木が自らを守るために分泌するもので、健全に育ってきた証でもあります。
同じものがひとつとしてない。それが、木という素材の魅力だと思います。
「wood diffuser rin」は、森と暮らしを静かにつなぐプロダクトです。木を育て、伐り出し、形にし、届ける。その一つひとつの工程の先に、「rin」はあります。
木が香りをまとい、ゆっくりと空間に広がっていく。その香りの時間が、遠く離れた森へと思いを巡らせるきっかけになるかもしれません。ただの香り以上に、森とつながる体験へと変わっていくはずです。
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